戸川純という名前を聞いたことがある方は、それなりに多いのではないかと思います。
ただし「彼女の歌」に関しては、かなりの好き嫌いがあるのではないか、とも思います。
今回は、私がそんな彼女のアルバム『玉姫様』を、初めて聴いた時の話をします。
出会いは『さよならをおしえて』
戸川純さんの曲に出会ったのは、遡ること10年以上前です。
当時の私は、『さよならを教えて』というゲームが好きでした。
そしてゲームについて調べていく内に、ゲームタイトルと同名の曲があることを知りました。
それがこの、フランソワーズ・アルディさんの『Comment te dire adieu(さよならを教えて)』です。
Comment te dire adieu (It Hurts To Say Goodbye)
- 発売日: 2004/09/01
- メディア: MP3 ダウンロード
上品なフランス語で歌う、ウィスパーボイスの綺麗な曲。
しかしさらにそれをカバーした曲があると知り、聴いたのが戸川純さんの『さよならをおしえて』という曲でした。
可愛らしく歌い出した曲は、途中で怨念まみれの独白が入り、そしてサビ部分で歌声がまるで別人のように変わります。
この曲を聴いた当時の私は、こう思いました。
「めちゃくちゃ怖ぇ」と。
これが私と戸川純さんとの、初めての出会いでした。
戸川純について
それからは私は、熱心に彼女の曲を聴くわけでもなく、かといってあの曲の衝撃を忘れることもできずにいました。
そんな中、久しぶりに彼女の曲が聴きたくなって、ふとAmazonミュージックを見ると『玉姫様』というアルバムを見つけました。
それまで彼女のアルバムを聴いたことはなかったのですが、これを機になんとなく再生してみます。
その中でも、アルバムタイトルと同名の『玉姫様』という曲は、月経をテーマにしたあまりにも生々しい曲でした。
「よくわからんけどすごく怖い…」
あの時と変わらずやっぱり怖かったので、「この人は一体どんな人なんだろう?」と好奇心を抱き、彼女について調べてみることにしました。
ネットにあったインタビュー記事を読んでみると、とても純粋な人だな、というイメージを持ちました。
そう考えると、「生々しい歌詞は極端にストレートなせいだったのか」と合点がいきます。
確かに建前のない本音の言葉は、純粋だけど時に人を傷つけることもあります。
『玉姫様』に収録されている『諦念プシガンガ』も、人間としての女性ではなく「生き物としての女」のような恐ろしさがあると思います。
そんなに彼女の曲を聴いたわけではないのだけど、私は特に彼女自身が書いた詞が好きです。
あまりにも生々しくて目を背けたくなる、怖いけど惹かれる、おぞましいのになぜか美しい。
私がそんなことを強く感じたのは、『蛹化の女』という曲でした。
生きているから怖い
さらに『蛹化の女』では、パッヘルベルのカノンの音色に合わせて、まっすぐな歌声で彼女が歌います。
夜の森の奥で、一人の女が男を想い、虫の姿へと変容していく。
想像するだけですごく怖いのに、なぜかとても神秘的なシーンが頭の中に浮かび上がってくる。
曲調のせいなのかと思いきや、不思議なことにパンクバージョンを聴いても、私はそう思ってしまうのです。
でもこの『パンク蛹化の女』、初めて聴いた時は怖すぎて最後まで聴けませんでした。
なぜだか無性に、停止ボタンを押してしまいたくなるほど、聴いていられないのです。
それでも本当に不思議なことに、なぜか何度も聴く内に、今は彼女の曲の中で一番好きです。
この曲を聴くと、まさに狂気と愛は紙一重なんだなと想います。
彼女のことは何も知らないけれど、私には純粋な言葉を叫んでいるように聞こえます。
生きているからこそ、ただひたすらに、時には血を流しながら、虫のように豚のように歌い続ける。
そこに、彼女の怖さと魅力があるのだと私は思いました。
彼女の曲を聴いたことのない方は、ぜひ『蛹化の女』だけでも聴いてみてほしいです。
TOGAWA LEGEND SELF SELECT BEST&RARE 1979-2008
- アーティスト:戸川純,戸川純とヤプーズ,戸川純ユニット,ゲルニカ,ヤプーズ,東口トルエンズ,仙波清彦とはにわオールスターズ,Lion Merry,梵鉾,ハルメンズ
- 発売日: 2008/07/09
- メディア: CD
プライム配信について
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プライム会員は初回30日間無料で試すこともできるので、気に入らなければすぐに抜けても大丈夫です。定期的に無料配信ラインナップは変わるので注意!
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