こんなんおひとつ

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ZARDを聴く人の気持ちが理解できなかった。アルバム『Golden Best』感想

J-POPを自ら進んで聴きたいとは、あまり思わない子どもでした。

そもそも音楽を聴くということに関心がなくて、それよりも漫画やアニメを観たいとばかり思っていました。

たまに音楽を聴いたとしても、ほとんどがアニメのOPやEDばかりで、わざわざ好きなアーティストの音楽を聴くのは岡崎律子さんの楽曲くらいでした。

音楽を聴くことの意味


どうして何も知らない人の歌を聴きたがるんだろう?

全くアニメと関係のない、私の知らない邦楽や洋楽を聴く両親や友達のことが、当時は不思議で仕方ありませんでした。


さて、私は大人になりました。大人になって変わったことの一つは、車を運転できるようになったということです。

免許を取って、自分の車を運転するようになりました。私はそれに乗って出勤したり、買い物へ行くようになりました。

随分と前置きが長くなってしまいましたが、今回の本題は車のBGMについてです。

名前だけは知っていたZARD


最初はもちろん、自分のお気に入りのアニソンばかりをローテーションで流していました。でもある日、ふと、いつもと違う曲が聴いてみたくなったのです。

なんとなく助手席のダッシュボードを開けてみると、そこにはZARDのゴールデンベストアルバムが置いてありました。


何でここにこんなものが?


しばらく考え込むと、引っ越す前に実家から貰ってきたCDの一つだったことを思い出します。

とりあえず聴いてみるかと思い、CDをセットすると、聞き覚えのあるアニソンがたくさん流れてきました。


スラムダンク、名探偵コナン、ドラゴンボールGT……ああ、この曲好きだったなぁと思いながら車を走らせていると、全く知らない曲が流れてきました。


『My Baby Grand 〜ぬくもりが欲しくて〜』です。


実はこの曲、1997年のドコモのCMタイアップ曲なのですが、私には聞き覚えがありませんでした。

そして大変失礼なことに、私の中でのZARDという存在は、たまにアニメの楽曲を提供しているなぜか世間でとても人気のアーティストという程度の認知しかなかったのです。

そんな中流れてきたのが、この『My Baby Grand 〜ぬくもりが欲しくて〜』です。

ぬくもりが欲しくて


最初は知らない曲なので、すぐに飛ばそうかと思ったのですが、運転中なので手が離せません。

仕方なく、しばらくこのままでもいいかと思い耳を傾けてみると、この曲はタイトル通り「温もりが欲しい」と願う女性の曲でした。


この人も、こんな風に孤独を感じていたんだ。


そう思うと、なんだかもっと集中してこの曲を聴きたくなって、赤信号の合間にこの楽曲だけをリピート再生にしました。

街の人混みの中で、ひとり寂しさを抱えながら、それでも他人を求め続ける歌詞。

でもどうしてこの人は、こんなにも温もりを求めているのだろう?
作った曲を聴いてくれるたくさんのファンがいて、それでもなぜこんなにも孤独を抱えているのだろう?

家に帰って、さっそくZARDというアーティストについて調べてみます。

作詞はこの曲を歌っている、坂井泉水さんという女性。どこかで聞いたことのある名前だな、とぼんやり考えて……


そうか、『負けないで』の人だ!


私は『負けないで』の歌詞が、正直あまり好きではありませんでした。

最初から最後までこの曲をちゃんと聴いたことはなかったのですが、サビの部分はさすがに耳にしたことがあります。

この楽曲を使われている番組のイメージが強すぎるのかもしれませんが、歌詞自体もなんだか頑張ることを強要されているようで、私はこの曲のことを好きになれなかったのです。

同一人物とは思えない歌詞


さて、私の中のZARDというイメージがはっきりしてきたところで、改めて『負けないで』と『My Baby Grand 〜ぬくもりが欲しくて〜』の歌詞を交互にじっと眺めてみます。

歌詞は記事に載せられないので、『My Baby Grand 〜ぬくもりが欲しくて〜』『負けないで』の歌詞をそれぞれ参照してみてください。


これは本当に、同一人物の書いた歌詞なのでしょうか?


あんなに力強く他人を鼓舞して背中を見送る歌詞を書いた人と、人の温かさを求めて街を彷徨った歌詞を書いた人が、どうして同じなんだろう?

『負けないで』が頑張ることを強要していたのなら、どうして『My Baby Grand 〜ぬくもりが欲しくて〜』ではこんなにも弱く孤独なんだろう?

そこで初めて、『負けないで』は、彼女の強がりだったんだと気づきました。

私にとってのZARD


私は坂井泉水さんという人のことを、全て理解することはできません。もちろんこれはただの感想であり、憶測です。

だってその人が本当に強いか弱いかなんて、本人にしかわからないのです。


でも私にとってのZARDは、弱い心を隠して、懸命に強いフリをして生きる一人の女性の歌でした。


J-POPを聴く人の気持ちが、ZARDのアルバムを聴く人の気持ちが、少しだけわかったような気がします。


これは、自分と同じ気持ちを探す旅なのだ。


自分の気持ちを代弁してくれる誰かを、皆はずっと探しているのかもしれない。

彼女の『心を開いて』を聴きながら、そんなことを思った。



Golden Best ~15th Anniversary~ (通常盤)

Golden Best ~15th Anniversary~ (通常盤)

  • アーティスト:ZARD
  • 発売日: 2006/10/25
  • メディア: CD
ディスク2がお気に入りで、最近はずっと車で流してます。CDで聴くのもいいですよね。


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