『ゲームさんぽ』は、様々な専門家が真剣にゲームを解説する実況動画です。
しっかりと作り込まれているゲームと、豊富な経験と知識がある専門家がいるからこそ実現した企画。
今回は、ライブドアニュースと実況者なむさんのコラボ動画を見てみた感想を書きたいと思います。
ゲームさんぽとは?
実際に視聴してもらうのが一番ですが、動画内の言葉を借りると
なまぐさ坊主「なむ」が、いろんな人とゲームを「さんぽ」して世界の見え方の違いっぷりを学ぶ修行
というコンセプトが『ゲームさんぽ』です。
プレイヤーのなむさんが各専門家のゲストを迎えて、ゲームを専門家からの観点で話をしてもらいます。
「○○のプロと行く」というサブタイトル通り、その道のプロがゲームを見るというのが肝です。
ゲーム内の出来事を所詮ゲームと切り捨てず、現実世界に置き換えて捉えてみる。
簡単なようでとても難しい行為ですが、専門家の知識を交えることによって分かりやすくなっています。
〇〇のプロたち
気象予報士と『ブレワイ』
第一弾は『ブレス オブ ザ ワイルド』を、気象予報士の石原良純さんに解説してもらいます。
私はBotWをやったことがないのですが、正直言って私はオープンワールドに全く興味がないです。
私はゲーム内の環境よりも、ストーリーやキャラクターを重視します。
天気が変わる。山に登れる。自由に動き回れるから何でもしていい。
だから何だ、とさえ思っていました。
しかしこの『ゲームさんぽ』を視聴して、その考え方が少し変わったのです。
そんなにこの空は南っぽくないよね。
南の空だったらもっと低いところに、もくもくっとした厚ぼったい雲が出てくる。
ゲーム内の空を見て、良純さんはこう言います。
ゲームの空に、もっというと現実の空にさえ、私はこんなに関心を持って眺めたことはありません。
私はキャラクターの感情について考えることはあるのですが、それと同じように天候や地形について考える人は初めて見ました。
さらに動画内で、良純さんはこう言います。
気象予報士になると何が良いかっていうと、風が見えるようになる。
気温の分布の違い、上空と下層の違い、熱伝導率の違い。様々な要因が重なって風が吹くから、知識があると風が見えるようになる。
この世界には、目に見えない様々なものがあります。
例えば人の心などもそうですが、通常はそういうものは感覚で捉えたり、理論で捉えたりして自分の中に落とし込もうとします。
だからゲームを遊ぶということは、もしかすると様々な文化や知恵に触れる機会なのかもしれません。
誰かが感じた世界を追体験する。
そう考えると、オープンワールドってすごく貴重な体験なのかもしれないと思いました。
精神科医と『デトロイト』
第二弾は『デトロイトビカムヒューマン』を、精神科医の名越康文さんに解説してもらいます。
【PS4】Detroit: Become Human Value Selection
- 発売日: 2018/11/21
- メディア: Video Game
開始から数秒も経たない内に、アンドロイドのコナーの顔を見た名越さんは、
優しいんだけども非常に神経質な感じ。
と分析します。なぜかというと、コナーの左右の目の大きさが違っているからです。
実際にコナーは穏やかで神経質なのですが、名越さんは初見で、しかも一瞬の内にそれを見抜いてしまいました。
そして名越さんは登場するキャラクターに次々と仮説を立てながら、こう言います。
「仮説をはっきり持って見る」というのが、精神科医としては必要なことなんだと思います。
写真立てに映る子どもが悲しそうな表情をしてるので、家族仲は悪いかもしれない。隊長はガッシリしてるから、パワハラの傾向があるかもしれない…
まずはそんな先入観を自覚して、それから一人一人に対して検証を重ねていくのが重要なのだと。
ものすごい怒りとか絶望があるんだけど、それを相手に言うということは、自分が「信頼できる人であってくれ」という無意識的な祈りもあると思うんですよね。
そう名越さんが語るのは、人質を取って立てこもるアンドロイドのダニエルに対してです。
デトロイトは過去に自分でプレイしましたが、その時は名越さんの仮説よりも、もっと精度が低い「何か」を感じていました。
きっとそれは感覚的なもので、そしてそんな「言葉にできない感覚を言葉にする」のが精神科医なのかもしれないなと思いました。
この動画では、登場するキャラクターに対して解説の焦点が当てられています。
だから私はこの『ゲームさんぽ』シリーズで、名越先生のデトロイトが一番好きです。
キャラクターを、本物の人間だと思って接するということ。
それは製作陣がそう思わなければできないし、またプレイヤーもそう思わなければできません。そしてそれは、なんて素晴らしいことなんだろう。
この動画を観ることで、改めてそう感じました。
弁護士と『グラセフⅤ』
第三弾は、『グランドセフトオート5』を弁護士の水野祐さんに解説してもらいます。
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悪いことをするのは駄目だと分かっているけど、一体どこからどこまでが「犯罪」になるんだろう?
グラセフ内でバイクを盗んだなむさんに対して、水野さんは冷静にこう言います。
二輪とか自動車とか可動性が非常に高いものは、少し動かしただけで窃盗成立します。
盗みは悪いことだけど、その線引きをするのは法律です。
つまり法律はただのルールではなく、「人間の曖昧さをきっちりと定義してあげたもの」なのではないかと思いました。
みんなが普段思ってる「常識」は、法的にもそんなに間違ったことはない。
問題なのは時代の進化と共に法律って古びてくるから、日常的な感覚と法律的にNGみたいなところの違いが出てきちゃう場合は良くない。
このとても分かりやすい水野さんの説明を聞くと、なぜ法律が整備されるのかが理解できます。
グラセフⅤは少ししかプレイしたことがありませんが、実はあの世界は荒唐無稽の何でもありの世界ではありません。
きちんとゲーム内には警察もルールもあるし、めちゃくちゃはできるけど実際にやるかどうかはプレイヤーの良心にかかっています。
だからプレイすると、思ったよりも現実世界の焼き直しみたいで、すごく窮屈に感じたのを覚えています。
私がグラセフⅤにハマれなかったのは、「無意識のうちにルールを守ることしか考えられなくなっていたから」なのかもしれません。
そしてさらに水野さんは、こうも言いました。
いいプレイヤーになるためには、ルールを知り尽くさなきゃいけない。
もしも私が世界のルールをきちんと理解していれば、それをかいくぐる方法も、うまく利用する方法も思い浮かんだのかもしれません。
柔軟な発想を持って世界を見ると、景色が変わって見える。そんなことを思いました。
別の視点でものを見る
ゲームを作る人と、それをプレイして遊ぶ人。両方がいて初めて成り立ちます。
言葉を言い換えると、それぞれが違う価値観に触れ、それを受け入れる必要があるのです。
話は少し逸れますが、私は最近YouTuberのカジサックさんの動画や、VtuberのDWUさんの動画を見ています。
「一体何の話だ!?」と思われるかもしれませんが、それらの動画もまさに価値観のぶつかり合いなのだと思います。
特に分かりやすいのが『DWU VS 発達障害者作家借金玉』の動画です。この動画では、全くと言って良いほど双方の言葉が噛み合ってないのです。
しかしここまで見事なすれ違いを見ることができるのも、youtubeというか、現代社会だからこそできることなのかもしれません。
現代は驚くほど手軽に、様々な専門家や色々な価値観を持つ人たちの話を聞けるようになったと思います。
例えばこの『すべらない話ですべらない兵動大樹さんに、1人喋りの極意を学ぶ。』の動画も、お笑い芸人としての観点を聞くことができます。
でもそれはコンテンツが面白いのではなく、そこにいる人が面白いということなのではないでしょうか?
つまり「場所はどこであれ活躍できる人がいる社会」になることが、大事なのかもしれません。
変わった視点を持つ人を切り捨てるのではなく、みんながそれを受け入れることができる社会。
いつか、それが当たり前になればいいなと思います。