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平成の終わりにケンとチャコを想う。映画『オトナ帝国の逆襲』ネタバレ考察

平成にスマートフォンが爆発的に普及し、SNS文化が栄え、そして令和が始まるなんて誰が予想できたでしょうか。

2019年の今になって、2001年に公開された原恵一監督の『オトナ帝国の逆襲』を、改めてもう一度観返してみました。

あの時代から約20年経ってから思うことを、今だからこそ考察してみます。

平成の時代に思ったこと


2001年の当時、私はまだ子どもでした。

それまでのクレヨンしんちゃんの映画といえば、『ヘンダーランドの大冒険』『雲黒斎の野望』などが印象的で、ビデオが擦り切れるほど観た記憶がおぼろげにあります。

そんな中で突然現れた『オトナ帝国の逆襲』は、子ども心ながらに異質で、異端で、不思議な作品だったように思います。


なぜか大人がハマった映画。


まるで劇中のひろしやみさえのように、周りの大人たちは過剰にオトナ帝国を持ち上げていたような気がします。

もちろん私は昭和の時代をよく知らないので「何がそんなにいいんだろう?」と思いながら、時々挟まるギャグシーンを笑って観ているだけでした。

だから私は大人になって平成が終わった今、ようやくこの映画が何を伝えようとしていたのかが分かりました。

ケンとチャコについて


この物語の昭和(過去)平成(現在)に置き換えて観てみると、ケンとチャコの悲しみや苦悩に共感できるような気がします。

俺たちにとってはここが現実で、外は偽物の世界だ。


例えばSNSを覗いてみると、毎日色々な情報がひっきりなしに現れます。

誰それが炎上した、何々の新作が出た、どこそこのスマホゲーが詫び石を配った…

今この瞬間を埋めるような娯楽が、そこらかしこに溢れ返っているように思います。


もしケンとチャコも、そんな「今」が嫌になったんだとしたら?


年金も貰えるのか分からない、平均年収も出生率も下がったこんな世の中で、私はどうやって生きていけばいいんだろう。

子どもを産み育てたとして、こんな世の中でどうして希望を持てと伝えてあげられるんだろう。

それはケンとチャコも同じで、偽物ばかりが氾濫しているこの世の中で、一体何を信じたらいいのかが分からなくなったのではないかなと思います。

ケンはなぜ計画を話したのか?


物語の終盤、ケンは野原一家にこう伝えました。

お前たちが本気で21世紀を生きたいのなら、行動しろ。

未来を手に入れてみせろ。


わざわざ場所も手順も教えて、ご丁寧に少し待ってから遅れて出発します。

彼は本当に「イエスタデイワンスモア」という組織名の通り、あの頃をもう一度取り戻そうとしていたのでしょうか?


だから私は、彼には迷いがあったのではないかと思います。


この世界を変えたいけれど、自分がそんなことをしてもいいのだろうか?

自分たちが20世紀を生きたいように、もしも21世紀を生きたいと願うものがいたら?


そしてそう思っていたのは、実はケンなのではないか?


本当はケン自身が、21世紀を生きてみたかったんじゃないかなと私は思います。

未来は常にある。俺たちが昔憧れた、夢の21世紀が。


物語の冒頭で、ケンがチャコにそう言っていたように。

チャコはなぜ外の世界が嫌なのか?


しんのすけが塔の上にたどり着き、ケンの足を掴んだ時、チャコの表情は悲しげに見えます。

やっと念願の20世紀を生きられるのに、全然嬉しそうじゃないのです。

嘘よ!嘘でしょ?
私たちの街が私たちを裏切ったってこと?


そう言いながらチャコは、しんのすけに八つ当たりをします。

どうして?ねぇどうして?
現実の未来なんて、醜いだけなのに!


なぜチャコは、現実の世界を醜いと言い表したのでしょうか?

この物語の中で、チャコの心情を読み取れるシーンは少ないです。

その中でも、チャコが言った言葉を引用しながら考えてみます。

外の人たちは、心がからっぽだから。物で埋め合わせしているのよ。

だからいらないものばっかり作って、世界はどんどん醜くなっていく。


最初の計画が実行される30分前、チャコはケンと20世紀の街並みを歩きながらこう言いました。

もしかしたら彼女は、今この瞬間が永久に続くよう願っていただけなのではないか?

ケンは未来に夢を見ているけれど、チャコは刹那的にを望んでいるだけのではないかと思います。


幸せな二人の同棲生活がいつまでも続くように、未来のことなんか考えないで、今この瞬間を二人で過ごしたい。


なぜそう思ったのかまでは分からないけれど、彼女の願いはたったそれだけのような気がします。

二人はなぜ死のうと思ったのか?

「おしまいね」
「ああ。20世紀は終わった」
「私外には行かないわよ」
「わかった」


大事なのは、ここで死のうと言ったのはチャコだけということです。

未来を夢見ていたはずのケンは、同意しかしていないのです。

きっとそれくらい、チャコを愛していたのでしょう。

死にたくない……!


けれどチャコは、直前になってこう言いました。

外には「行けない」じゃなくて、「行かない」と言ったチャコ。

行けるのに行きたくなかったチャコは、きっと未来が怖かったのかもしれません。


明日にはどうなるかが分からないこの社会が、人々が、未来が、全てが怖かった。


ただ今を生きたかった。たったそれだけなのかもしれません。

これからの未来に思うこと


私は今、ケンとチャコが望んだような未来を生きているのだろうか?

オトナ帝国をもう一度観終えた今、そんなことを思います。

令和はどんな未来になるんだろう。もしかしたら令和が終わる頃には、平成が一番良かったなんて思うのかもしれない。


私は野原一家のように、命をかけてでもこの世界の未来を心から願うことができるだろうか?


正直に言うと、ちょっと難しいかもしれないなと思います。

だから私は、しんのすけのような子どもが現れるのを待っているのでしょう。

大人はいつだって、これからの時代を担う子どもに未来を託すことしかできないのだから。



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ようやくこの作品が理解できて、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちです。名作です。


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