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絶望の中の祈りと希望。ゲーム『SWAN SONG』ネタバレ感想

とんでもない鬱ゲーがある、と聞いてプレイしました。
 
スワンソング、確かに鬱ゲーでした。でもこのゲームをただの鬱ゲーと評価するのは、勿体無いなぁと思いました。 
 
スワンソングは人間の醜さと、同時に人間の美しさを描いた作品だと私は思います。人の心を描くときに切っても切れないのは、醜い部分とか、そういうものの見せ方じゃないかなと思います。
 

シナリオについて

 
気持ちにリアリティがないと、途端に作り物というか、嘘くさくなる気がします。それはフィクションだろうと、やっぱり私は気になってしまいます。
 
このシナリオは、極限状態にいる人間の描き方が素晴らしくリアルに感じました。群像劇なので、メインキャラクターの視点ごとに話は進みます。
 
特にノーマルエンドまでの流れは凄まじかったです。めちゃくちゃ怖かった。ちょっと人間不信になるかと思うくらいです。
 
大まかに言うと、登場人物は陰と陽の性質に分けられます。ツカサくん、タノさん、ひばりんは陽。クワガタくんとゆかっちは陰ですかね。そしてあろえは……わかりません。
 
正直言って私は、クワガタくんやゆかっちの心情の方に共感しました。もちろん、タノさんやひばりんのことは好きです。ツカサくんに至っては、すごい人だなぁと思います。だからこそ、眩しすぎる。
 
彼らの中でも、特にクワガタくんの心理描写はリアルで怖かったです。どこにでもいそうな、真面目で気弱なオタク青年。それだけに、物語が進むにつれて、彼の考え方や行動を見るのが辛かったです。
 
トゥルーエンドの最後に、「自分の選択は間違ってなかった」とクワガタくんは語ります。その口調から、私には彼が狂っているようには見えなかった。だから私は、彼のことを憎めなかったです。
 
 

ノーマルエンドについて

 
ノーマルエンドのクライマックスは、教会で迎えます。ツカサくんとゆかっちの二人は、青空が広がる教会にたどり着きます。そこにはあろえの修復した、バラバラになった欠片を繋ぎ合わせたキリスト像がありました。
 
ツカサくんは最後の力を振り絞って、あろえの像を立てます。そこにはツカサくんの祈りが込められていました。
 
作中でも触れられていましたが、タイトルのスワンソングは、「白鳥は最期に美しい声で鳴く」という伝承になぞらえたものだそうです。
 
あろえの心情やキリスト像については、正しく理解することは難しいです。あろえは何を考えてたんだろう。もしかしたら、何も考えてなかったのかもしれない。でもきっと、祈りってそういうものなんでしょうかね。
 
一週目は必ずノーマルエンドになるのですが、そこに至るまでの過程も恐ろしかったです。
 
一番怖かったのは物語の終盤、学校から逃げ惑う阿鼻叫喚の群衆の表現です。ここで出てくる、とある絵画のパロディはまさに地獄絵図。混乱の中、誰が敵か味方かもわからくなった人々は、次々にツカサくんへと襲いかかります。
 
こんな内容のゲームが、この世に発売されていた。それだけでもう、私は嬉しく思います。嬉しいというか、安心したというか……ここまで人の心を丁寧に描いてくれるなんて思ってもみなかった。上手く言い表せませんが、とにかくこのゲームに出会えて良かったと思います。
 
普通のゲームや、漫画やアニメや映画や小説では、ここまで人間の本質に深く踏み込む心理描写は描けなかったのではないでしょうか。
 

トゥルーエンドが意味するもの

 
ちなみにスワンソングにも、トゥルーエンドってあります。みんな幸せとまではいかないけれど、希望に満ち溢れた終わり方です。
 
逆に希望がありすぎて、あまりにも出来過ぎてる印象を受けました。やっぱりこれってフィクションなんだよなぁ、みたいな。それくらいに一週目のノーマルエンドは強烈でした。
 
でもトゥルーエンドこそ、製作者の祈りなのかな、とも思います。たくさんのひまわりの中、みんなが笑顔で過ごしている風景。
 
例え見ることの叶わない夢だとしても、それこそが願いであり、祈りなんじゃないかなって思いました。

 

 

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