「好きなゲームのタイトルは?」と聞かれたら、私はまず間違いなく『SIREN』を挙げるでしょう。
もうすぐ発売から20周年を迎えるSIRENシリーズですが、令和の時代になった今でもカルト的な人気があるように感じています。
今回は、私が初めて『SIREN』をプレイした2000年代の思い出を語りながら、改めてSIRENシリーズの魅力について考えてみたいと思います。
作り込まれた世界観
かつてSIRENシリーズの公式HPにあった、めちゃくちゃ怖いフラッシュゲームをご存知の方はいますか?
もうサイトは残ってないので、気になる方は上記の動画をご覧ください。今見返してもめちゃくちゃ怖いです。
私がSIRENシリーズと出会ったのは、2006年のことでした。タイトルには『SIREN』発売当時の思い出とありますが、無印の発売は2003年なので正確には『SIREN2』発売時ですね。
その頃の私は中学生だか高校生だかで、ゲームの最新情報を得るには「TVCM・店頭・友達からの口コミ」だけが頼りでした。まだSNSも活発ではなく、個人サイトやTVメディアが全盛期の時代です。
そんな中、家電量販店のゲームコーナーに陳列されていた『SIREN2』と、その隣に置いてあったゲーム紹介用のリーフレットを読んだのが、SIRENシリーズとの出会いのきっかけでした。
2020.06.27追記:
探したらリーフレット見つかりました!リーフレットの下にあるのは映画版SIRENのフライヤーです。ちなみにリーフレットの中には、綴じ込みで「アトランティス増刊号」という架空のオカルト雑誌風記事が載ってました。凝りすぎでは?(追記ここまで)
そんなこんなで購入した『SIREN2』とリーフレットを手に、家に帰って早速SIRENシリーズについて調べます。
そこで知ったのは、SIRENシリーズの奥深さと、異様なほどに作り込まれた世界観でした。
ゲーム中で得られる100個のアーカイブはもちろんのことですが、冒頭のフラッシュゲームを見ても分かるように、ゲーム以外の要素の完成度も高すぎるのです。
公式サイトに掲載された外伝小説や、登場人物が書き込んだ掲示板のログ、さらには作中に出てくる都市伝説の紹介ページ、挙げ句の果てには劇中に出てくる村のライブカメラ配信など…
とにかくSIRENシリーズは、公式から得られる情報が半端ないのです。
そしてさらには、個人サイト上での口コミからの情報量もとてつもなく多かった気がします。どこかの掲示板で「こんなのあったぞ!」と書き込まれてはそれを見に行き、誰かの考察を読んでは唸る…そんな日々が続きました。
ちなみに当時、好きでよく見ていたのはサイレンの部屋という個人考察サイトです。その節はどうもお世話になりました。
高難易度のホラーゲーム
順調にSIRENシリーズについて興味が湧いたところで、自然と前作の『SIREN(無印)』にも興味を持つようになり、すぐにこちらも購入しました。
ちなみに私はホラーが好きでそれなりに得意なので、『SIREN2』を遊んだ時もそこまで怖いとは感じませんでした。だから無印も大丈夫だろうと高を括っていたのです。
しかし無印プレイ開始後、あまりの恐怖にコントローラーを持つ手が震え出し、最初のステージをクリアするまで30分以上かかりました。
いきなり画面に現れる「駐在警官からの逃亡」の文字、頼りない懐中電灯の光だけで暗闇に放り出される心細さ、背後から聞こえる銃声、訳もわからず逃げ込んだプレハブ小屋にやってきた警官とのドアチェイス…
高難易度にも様々な種類がありますが、パッと思いつくのは難易度選択でしょう。実際、『SIREN2』にもハードモードはありました。
ですが無印には難易度選択は存在ぜず、画面上には体力ゲージ等のユーザーインターフェースもなく、マップの現在地は表示されません。つまりゲーム内の登場人物とプレイヤーの条件がほぼ同じなのです。
少し話が逸れますが、この無印と雰囲気がよく似ているゲームに『ルールオブローズ』が挙げられると個人的に思っています。
世界観とストーリーの良さは、無印と並ぶほどの名作だと感じています。惜しむらくは『ルールオブローズ』は、操作性の悪さからゆえの高難易度になっているのが唯一の欠点ではないでしょうか。
『ルールオブローズ』も好きなのでこのように作品を比較したくはないのですが、無印は意図的に高難易度を設定しているという点が素晴らしいのではないかと思います。
これは無印の設定資料集であるSIREN MANIACS(サイレン マニアックス)-サイレン公式完全解析本- (The PlayStation2 BOOKS)にも、制作時のテーマとして「ドルアーガの塔のようなものを作りたい」と書いてあります。
難しいゲームを皆で協力しながらクリアする。そのために無印は絶妙なバランスの難易度になっているので、プレイへの没入感が半端ないのです。
個人攻略サイトの利用
当時は今のようにSNSも動画サイトも賑わっていなかったので、攻略となると個人サイトが主でした。
当然ながら個人が運営するサイトなので、現在よくあるゲーム系wikiのように情報は網羅されてはいません。今では考えられませんが、サイトごとに切れ切れに綴られたhtmlページの海をさまよいながら、毎日に攻略を集めていました。
ビッシリと文字だけで書かれたもの、手描きのペイントイラストで丁寧に地図が貼られてるもの…そんな闇鍋のような攻略ページを見ながらクリアを目指します。
しかし攻略を見たからといって簡単にクリアできるわけではありません。とてもじゃないけど怖くて難しく、一人ではクリアできそうにない。そんな時こそ、個人サイトの存在が有り難かったです。
サイトによって攻略方法が違うのは、皆がそれぞれ考えて、努力した証拠だからです。
誰かが同じように必死にクリアしたんだと思うと、自分ももう少しだけ頑張ってみようという気にもなります。
印刷したサイトのページは攻略本のように分厚くなり、自分で新たに補足を書き込み、紙が擦り切れるほど読み返しながらプレイした結果、1ヶ月かけてクリアすることができました。
後になって思い返すと受験よりも努力していたような気がします。それほどまでの入れ込み具合でした。
ゲーム以上の体験
最終的にはプレイする手の震えも収まり、平常心で無印を遊べるようになりました。
恐怖心が失われて少々物足りなさを感じてはいましたが、それでも一年くらいはずっと無印を遊んでいた記憶があります。
ゲーム自体も楽しかったのですが、それよりも劇中の世界(羽生蛇村)にずっと浸っていたかったのかもしれません。
その度に、自分が本当に羽生蛇村の棚田や廃屋や学校にいるような気がして、それがとてもドキドキしたのを覚えています。
それから廃墟にも興味を持つようになり、マニアックスにも載っていた廃墟の歩き方 探索編という本を買って読んだりもしました。
大人になってから廃墟で有名な軍艦島や、摩耶観光ホテルにも行ったりもしました。もちろん正規のツアー見学です。確実に『SIREN』という作品は、私の人生において強い影響がありました。
『SIREN』といえば毎年8月にTwitterで異界入りするのが名物ですが、それはきっと皆が今でも当時の体験を求めているからなのかもしれません。
手に汗握る感覚だったり、仲間と騒いだりする楽しさだったり、ああだこうだと議論したりする時間だったり…
きっとそれぞれが、8月3日になるとそれぞれの『SIREN』を思い出しているのだと思います。以前開催されたSIREN展にも行きましたが、当時を思い出してとても懐かしかったです。
そういえば「こんなにもSIRENが怖くて面白いのは思い出補正かもしれない」と思って久々に無印をプレイしたら、やっぱり普通に怖くて面白かったです。
流石にもう手は震えませんが、どれだけルートを覚えてもどれだけやり込んでも、やっぱり屍人が目の前にいると恐怖を感じます。
一気にクリアしようと思ったのですが、精神力が保たなくて途中で止まってしまいました。こんなゲームはきっと他にないです。
十数年以上経った今もなお、記憶をなくしてもう一度プレイしたいと願います。
でもうっすらと、もうこんなゲームを体験できるのは二度と無理なんじゃないかとも思っています。
まだ見ぬ新作を夢見て
今の時代に、もう一度『SIREN』のような怖さを体験できるゲームがあるのでしょうか?
ずっとそう考えていたのですが、私は最近『SIREN』によく似た面白いゲームを遊びました。そのタイトルは、『SEKIRO』です。
奇しくも同じく死にゲーで、Sから始まるローマ字タイトルです。『SEKIRO』はホラーではありませんが、緊張感や難易度のバランスがとても『SIREN』と似ていると思います。
ネット社会のこのご時世ですから、『SEKIRO』にはたくさんの攻略サイトや攻略動画が存在しています。
しかし『SEKIRO』もまた、『SIREN』のように簡単にクリアすることではきません。だからこその楽しさと面白さが、そこにはあります。
できることなら、またそんな風にSIRENシリーズの新作をプレイしてみたいです。
『SIREN』のリメイク作である『SIREN NT』も面白かったけど、私はより難しく、より怖いものを求めています。
本当に本当に『SIREN3』をずっと待ってるんです!
私はいつまでも、これからも、SIRENシリーズの新作を待ち続けています。
私は当時PS2のベスト盤を書いましたが、PS2アーカイブスもあるようですね。実機がない方はぜひアーカイブスでプレイしてみてください。
設定資料集です。登場人物の行動フローチャートが見たくて時々読み返します。外伝小説である羽生蛇村異聞も読むことができます。